初日コベルコ建機 株式会社 矢野 雅大さん 「現場監督者を悩ます外国人との分かち合い活性に向けて」
矢野さんが入社したのは20年前、大垣事業所大垣工場ミニショベル製缶作業者としてキャリアをスタートさせました。製缶溶接職場には日系ブラジル人が多く、ポルトガル語で話しかけられる日々を過ごした経験があります。
新たに多治見工場を立ち上げるにあたって直面した外国籍作業員との協働が本発表のストーリーです。量産開始時、作業者の約8割が外国籍となり、通訳不在のまま稼働を開始した結果、5Sや基本ルールの徹底が進みませんでした。その結果、溶接欠陥や組み付け間違いなどの品質不具合が多発し、他拠点からクレームを受ける状況になっていました。さらに、生活面でも近隣トラブルが続き、管理者が対応に追われる状況が重なってしまいます。
追い打ちをかけるように、工場近隣の公共地でベトナム人の作業員たちが無断でパクチーを栽培していたことが発覚しました。矢野さんが思わず漏らした「なんでパクチーやねん」という戸惑いと怒りの言葉。これは異文化を理解できない、理解しようと努めない自分自身の中にある「壁」の存在に気づくきっかけにもなりました。
そこで矢野さんは、職場の常識や価値観を集団として理解してもらう土台づくりに取り組み、母国語レッスンをきっかけに挨拶、対話を増やしました。そのうえで、交流機会の創出や通訳アプリの活用を通じて、価値観や動機を把握し、国籍別対応ではなく個々が何を大切にして働くのかに焦点を当てた関わりへと移行します。
交流を深め、個々人の付き合いが増えた結果、外国籍の技能生も、日本人も同じく家族や友人を大切にする「同じ人間」であると相互理解が深まっていきました。異文化の象徴とも言えるパクチーの栽培を一度はやめさせたものの、ふるさとを懐かしむスタッフたちの思いを理解した矢野さんは、自ら工場の管理職に働きかけて許可を取得します。工場内の緑地での栽培が認められたことは、ベトナム人の作業員たちのモチベーション向上にもつながりました。またインドネシア人のイスラム教徒のために、祈りの場も整備するなど、異なる文化への理解、受容の姿勢を形にしたことで、作業員が自発的に5Sやルール遵守へ動き始めたのです。近隣とのトラブルも激減していったと言います。
日本人との心理的な距離が縮まった結果、相談が増え、改善提案も生まれる状態へ転換しました。結果として、品質面でも再発防止が進み、組立・出荷前の不具合は、7割以上も減少。現場は一体感のある生産・改善活動へと変化していきました。
工場立ち上げ当初は、外国籍社員との関わり方やルールやマナーの指導、風通しの良い職場づくりに試行錯誤を繰り返したものの、矢野さんは諦めることなく真摯に取り組みを続けました。その結果、異文化を尊重し合い、一体感のある職場環境を築き上げることができました。